2018年早々に、30円台に返り咲いたトルコリラ。
その背景には目先の問題の沈静化がありつつ、やはり根底には色々な問題が燻っているのがトルコ・・・なんて書き出しを用意していたら、早々に30円割れをするような状況である。
トルコが抱えている問題の整理と、僕なりのトルコリラの見通しについてまとめたいと思う。
※あくまで僕個人の予測であり、保証できるものではありません。これによる取引での損失は補償致しかねます。トレードはくれぐれも自己責任でお願いします。
トルコが抱えている問題
いきなりこんなことを言うのも何だが、はっきり言ってトルコは問題を抱えまくっている。
が、火種を抱えているのは日本も、アメリカも、ドイツも、イギリスも、南アフリカも、メキシコも、どこも同じ。
問題があるからハイ駄目ですみたいな短絡的な考えではなく、まずはどんな問題が存在するのかを見ていこう。
独裁不安と外交問題
2018年現在トルコの大統領はレジェップ・タイイップ・エルドアン氏。
2003年から2014年8月までの間首相を務め、その後選挙を経て大統領に就任。
本来トルコの大統領は象徴的存在であり政治の実権は首相が握っているのだが、大統領就任後も側近を首相に置き、述べ15年も事実上の政治トップとして君臨している。
後述する憲法改正によって大統領権限が強化されることがほぼ決定されており、更に総選挙で現与党・AKP(公正発展党)が勝利すれば合計で20年以上政治君主の座に就くことが見込まれる。
トルコ国民にとってはカリスマ的存在で支持も厚いのだが、反発も少なくない。敵も味方も多いタイプ。
・政教分離・世俗主義を是とするトルコにおいて、イスラム回帰的な思想・言動があることへの反発
・汚職疑惑や報道規制など、独裁色への反発
・2016年7月に起きたクーデター未遂に対する強烈な静粛への反発
三点目、クーデター未遂への静粛については諸外国からも批判が強く、特にドイツ・アメリカとの関係が悪化している。
また、1970年代からEU加盟の交渉を行っているが、40年以上経った現在も見通しは暗い。
2018年に入り加盟ではなくパートナー協定という案が浮上しているが、その実態は全くの未定のようだ。
クルド人問題などの地政学リスク
トルコ人口の約20%をクルド人が占めている。
クルド人というのは国家を持たない最大の民族なのだが、独立を掲げる動きは長く2017年にはイラン北部でクルド人自治区が独立を目指す国民投票が行われている。
トルコに居住するクルド人も例外ではなく、クルド人によって構成されるクルド労働者党(PKK)という組織との紛争は根深い。
特に2016年頃まではIS・PKKによるものとされるテロが頻発し、更にクーデター未遂まで起きたことでトルコへの観光客は激減した。
カッパドキアの気球が有名なトルコ観光業は主力産業の一つであり、経済への打撃は大きい。
2017年頃からはテロも落ち着き徐々に回復傾向だが、リスクを抱えていることに変わりはない。後述する2019年の総選挙に向けて反対する動きが高まれば、再び増加する懸念もある。
インフレ問題
トルコでは年間10%強(2017年)というペースで急速にインフレが進んでいる。
経済の成長に伴う緩やかなインフレは好感すべきだが、同時に貨幣価値の低下を意味するので行き過ぎるとよろしくない。
トルコ中銀(TCMB)は利上げによって貨幣価値を高めインフレを抑制しようとしているのだが、エルドアン大統領は経済に悪影響を与えるとして利下げを訴えている。
本来中銀は政治と独立して通貨価値の保持をすべきというのが世界的な認識であり、この利下げ圧力が強まるとトルコ中銀の独立性への懸念、ひいてはトルコリラの貨幣価値への信用低下へ繋がるのである。
現在のところ利下げ圧力に屈せず、事実上の利上げを行っているので問題はないのだが、不安視する声があるのも事実。
なお、2005年にはデノミが行われているが、背景には1990年代の経済の低迷による政府債務増、平均して80%近くという驚異的なインフレがあり、現在再びデノミだ経済破綻だという心配があるかと言えば、そこまでのレベルではない。
2019年に控えた総選挙と憲法改正
2017年4月に憲法改正の是非を問う国民投票が行われ、僅差で賛成派が勝利した。
このまま行けば2019年11月に総選挙・大統領選が行われ、大統領権限が大きく強化される見通しである。
そもそもエルドアン大統領が自分の権限強化の為に行った色が強く、独裁色が増大するリスクを孕んでいるだろう。
一方で、野党MHPから独立して善良党(IYI)という党を立ち上げたメラン・アクシェネル氏という女性議員が大統領選への出馬を表明しており、それなりの支持を集めているようだ。
このアクシェネル氏、2018年中の解散総選挙を訴えており、国民の支持が集まれば大きな動きを起こすかもしれない。あるいは、その前に解散してしまって議席を固めるか。
まだ可能性は低いが、2018年最大のイベントとなる・・・かもしれない。
トルコリラの今後の見通し
上記はトルコリラ円(TRY/JPY)の週足。
綺麗な下落トレンドではあるが、2017年以降カーブは緩やかになっている。こう見ると改めて10月のビザ問題がなければ・・・と思わされる。
向こう数ヶ月は28~31円の間で横這い、抜けた方に大きく動くか。
というのが個人的な見方。
下に抜ければその時は25円あたりが一先ずの下落目途・・・
だったのだが(追記)
2019年11月に予定されていた総選挙・大統領選が大幅に前倒しされ、2018年6月24日に実施されることに。
これにより政治リスクが急速に加速。一気にドルトルコリラ5.0超・トルコリラ円20円割れも覚悟しなくてはいけない水準になってきた。
更にエルドアン大統領再選となれば未知の領域。アクシェネル氏が勝利すれば、大きく回復できる見込みがある。
・・・しかし、2016年のクーデター未遂といい、2017年のビザ発給停止といい、警戒していないところから問題が勃発するのがトルコである。
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