3月22日、トルコリラが急落した。
20円台半ばで燻っていたものが20円を割れ、一時18円台にまで下落。
(追記:その後トルコ中銀が一時的にスワップ金利を引き上げたことにより20円台に回復。)
実は決定的な引き金となったものは明確になっておらず、複数要素が絡み合って売りが加速したものとの見方が強い。
- しばらくトルコリラの値動きが収まり、ポジションが溜まっていた
- インフレ率の低下に伴う政策金利の引き下げ予想
- 欧州経済の鈍化による世界的な経済の冷え込み予想
- エルドアン大統領のゴラン高原に関する発言による対米関係の緊張
- トルコ中銀による金融引き締め対応による混乱
- 20円という心理的節目を割ったことによる損切り
これらが複雑に絡み合い、トルコリラが急速に売り込まれたのだろう。
それぞれの要素について、確認していきたい。
しばらくトルコリラの値動きが収まり、ポジションが溜まっていた
これは以前の記事でも書いたことなのだが、トルコリラは2018年の8月のショックから徐々に回復し、しばらくは安定した動きを見せていた。
(2019年1月初頭のアップルショックを除く)
これにより、ポジションが段々と増えていき『上にも下にも動きやすい状況』となっていた。
多くの損切りを巻き込んだのも、これが一つの要因であるだろう。
インフレ率の低下に伴う政策金利の引き下げ予想
トルコのインフレ率は依然高い水準ではあるが、徐々に回復しつつある。
そんな中、アルバイラク財務相は9月にはインフレ率が一桁になるとの見通しを発表。
それに伴い、政策金利についても引き下げていくとの見通し。
また、ロシアの投資会社も6月にトルコの政策金利が引き下げられるという予想を出している。
これ自体が即時にトルコリラの下落を引き起こしたものではないが、市場に少し嫌なムードを残していたというのを、今回の背景として押さえておきたい。
インフレの低下に伴う政策金利の引き下げは経済の健全化に繋がるので、トルコリラの貨幣価値的には本来プラスなのだが・・・
いかんせん、トルコリラという通貨が金利に注目されすぎている為にネガティブな目で見られてしまっている。
米・欧州経済の鈍化による世界的な経済の冷え込み予想
米欧 成長の鈍化警戒…利上げなし -読売新聞 2019年3月21日
米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、成長の鈍化を理由に、年内の利上げ見送りとの想定を示した。
欧州中央銀行(ECB)も今月上旬、利上げを断念しており、米欧の中央銀行が足並みをそろえて、金融引き締めに慎重なハト派に転換した。
海外経済の減速懸念が強まる中、米欧の政策変更で円高が進めば、日本銀行は一段の緩和を迫られる可能性がある。
同時に注目したいのが、世界経済の鈍化。
アメリカ・EU共に利上げを見送りしており、世界的に冷え込みの気配が漂っている。
そうすると全体的にリスクオフムードとなり、リスク資産から安全資産への切り替えが進む。
当然トルコリラはリスク資産であるので、このムードの中では売りの動きとなりやすい。
エルドアン大統領のゴラン高原に関する発言による対米関係の緊張
ゴラン高原、新たな火種に -日本経済新聞 3月22日
トランプ米大統領は21日、イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領したゴラン高原について同国の主権を認めると表明した。
50年以上にわたって主権を認めていない国際社会に背を向け、親イスラエル路線を一段と鮮明にした。
同高原周辺にはイランが軍事拠点を設けているとされ、イスラエルとの緊張が高まるリスクがある。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4278362022032019FF8000/
エルドアン大統領、トランプ米大統領のゴラン高原をめぐる発言に抗議 -TRT日本語 2019年3月22日
エルドアン大統領は演説で、トランプ大統領の『ゴラン高原におけるイスラエルの主権を認定する時が来た』との発言に抗議した。
「トランプ大統領の不運な発言は、地域を新たな危機、新たな緊張に陥れた」と述べたエルドアン大統領は、ゴラン高原の占領を正当化することは決して容認しないと話した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO4278362022032019FF8000/
つまり、こういう状況
- イスラエル:1967年以降シリアのゴラン高原を占領し、主権を主張
- 国際社会:イスラエルの主張を認めない姿勢を維持
- トランプ大統領:今回、イスラエルを支持
- エルドアン大統領:トランプ大統領に反発
これにより、米・トルコの関係悪化が懸念。
少なくともここまでが、今回トルコリラが売られる引き金となった要素とその背景である。
トルコ中銀による金融引き締め対応による混乱
トルコ中銀、予想外に金融政策姿勢を引き締め-通貨リラ下落に対応 -ブルームバーグ 2019年3月23日
トルコ中央銀行は通貨リラの下落を受けて、金融政策姿勢を引き締めた。リラは新興国通貨の中で下げが目立っていた。
トルコ中銀は22日、「金融市場の動向を考慮して」1週間物レポ入札を停止するとウェブサイトで発表した。停止する期間は明示していない。同中銀は1年足らず前に、主要な資金供給手段として1週間物レポ入札を活用する意向を示していた。
中銀の発表を受けてリラは一時下げ幅を縮小したものの、その後は下落を再開。ニューヨーク外国為替市場では対ドルで一時5%近く値下がりした。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-22/PORYMJ6K50XV01
ここまでの流れでトルコリラが下落したことを受け、トルコ中銀は1週間物レポ入札の停止を発表。
金融の引締め(利上げ傾向)方向の動きではあるのだが、効果はほんの一瞬ですぐに下落再開。
実はこの背景にはトルコ中銀が外貨準備高(為替変動に対する準備資金)を減らしたこともあり、結局はトルコ中銀の意図するところが読めないことから余計に混乱が進んだ結果となった。
20円という心理的節目を割ったことによる損切り
トルコリラは世界的に投資されている通貨ではあるが、日本人の取引量はそれなりの割合を占めている。
今回の下落で『20円』という節目を割り込んだことで、損切りによるトルコリラ売りが一定数発生。
急激なクラッシュと言うほどではないが、下落を加速させる一因となった。
これを受けてトルコリラ
トルコリラ円(TRY/JPY)1時間足
3月22日の17時ころから徐々に下落。
23時台に下落が加速し、23日1時台には19円を割り込み18円台に突入してしまった。
これは、アップルショックを除くと2018年10月以来、約半年ぶりの安値。
ドルトルコリラ(USD/TRY)1時間足
対ドルでも上昇し、5.4台→5.8台へ。
こちらも10月以来の安値となってしまった。
まとめ・今後の動向
- 背景1:最近の安定による買いポジションの増加
- 背景2金利引き下げ・経済冷え込みへの懸念
- 引き金:『ゴラン高原』を巡る米トルコ関係の緊張
- 加速要因1:トルコ中銀による金融引き締め対応による混乱
- 加速要因2:20円という心理的節目を割ったことによる損切り
というのがおよそ今回の下落の構成要素と言って良いだろう。
向こう一か月のビッグイベントとしては、3月末に地方選挙・4月25日に政策金利の発表を控えている。
この1ヶ月、気を引き締めて臨みたい。
追記:力技で20円台に回復
そのまま崩れたら・・・と懸念されたが、トルコ中銀がスワップ金利を一時的に引き上げ。
くりっく365を例にすれば、3月27日が199円、3月28日が216円。
当然マイナススワップも増加することで、ショートポジションを強制的に減少させるという荒業に出た。
背景には地方選を前に通貨価値を落とすわけにはいかないという考えがあるのだろう。
その甲斐あってか週明けから徐々に回復。
とはいえ荒療治なので、手放しには喜べない。
とりあえずは20円台の定着に期待したい。
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